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※「千葉県宅地建物取引業協会 研修会テキスト」 から抜粋したものです。
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賃貸物件の押さえ預かり金を返還しなかった |
賃貸借媒介時の預り金を返還しないとして紛争となり、行政指導を受けたケース
紛争内容
- 新婚世帯用にアパートを探していた借主Aは、住宅雑誌に適当と思われる物件があったので、媒介業者Bを訪ね、雑誌掲載物件の紹介を依頼した。
- 雑誌掲載物件は、すでに借主が決まっていたために、別の物件を現地案内してもらった。
- 案内を受けた物件の中に、取りあえず気に入った物件があったので、このことを媒介業者Bに告げたところ、賃料の1月分の預り金を置いていかなければ、物件を押さえておくことはできないということだった。
- そこで、借主Aは、他の借受け希望者が現われて、先に契約されてしまうといけないと思って、8万円を媒介業者Bに預け、物件を押さえてもらうことにした。
- 借主Aは、その日のうちに、婚約者に話をしたところ、日当たりが悪そうなことから、別の物件を探すことにした。
- 翌日になって、借主Aは、契約する気持ちのないことを媒介業者Bに告げ、預り金の返還を求めた。
- これに対して、媒介業者Bから、貸主の承諾を得ており預り金は手付金にかわったので、返還できないと拒否された。
【媒介業者Bの言い分】
民法上、賃貸借契約は諾成契約であり、客の借受け申込みに対して、貸主がこれを承諾したのだから、この時点で契約は成立している。
したがって、預り金は手付金に振り替わったので、このような処理をしたので返還できなしい。
【本事案の問題点】
借主が居住用の賃貸物件の紹介を媒介業者に依頼して探す際に、契約前に借主と媒介業者の問で預り金として、賃料の1月分相当額の金銭を授受することが少なからず行われている。一般に、この種の金銭は、その物件の借受けを真剣に考えていることの証明として、また、当該物件を押さえてもらうため、すなわち、申込み順位確保の目的で授受されているにすぎない。
したがって、本事案では、返還の請求を受けたわけであるからすみやかにこれに応じるべきであった。
【本事案の結末】
県の宅地建物取引業法所管課で媒介業者を指導したところ、預り金は返還された。
本事案に学ぶ
賃貸借の媒介で、既に受領した預り金を返還することを拒むことはできない
賃貸借媒介時の預り金に関して、媒介業者と借受予定者との間の紛争は少なくない。
このような紛争を未然に防止するために、平成6年4月に建設省の作成した借主との「住宅の標準賃貸借媒介契約書」(借主用)では、次のように、記載されている。
(賃貸借契約成立以前の金員の受領の禁止)
第4条 乙は、目的物件の賃貸借契約が成立する以前に、いかなる名義をもってするかを問わず、甲に対して、金員を預けるよう要請することができません。
2 乙は、目的物件の賃貸借契約が成立する以前に、甲の依頼により甲から金員を預った場合には、契約の成立のいかんにかかわらず、当該金員を甲に返還しなければなりません。
※預り金の返還を拒む行為は禁止事項として業法第47条の2、第3項にもとづく建設省令で定める行為として、下記のとおり、平成8年4月1日付けで施行されました。
記
施行規則第16条の7第2号
宅地建物取引業者の相手方が契約の申込みの撤回を行うに際し、既に受領した預り金を返還することを拒むこと。
なお、都道府則二よっては、文書で業界に対して、預り金の原則受領禁止を要請している例もある。同要請では、やむを得ず預り金を受領する場合は、事前に預り金が物件を担保する目的のものであり、物件確保の有効期限および必ず借受予定者に返還されるものであることについて記載した預り書を交付し、説明することが望ましいとしている。
取引主任者は、上記の趣旨を十分理解のうえ、適正な業務の遂行に努める必要がある。
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