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ホーム >> 【個人のお客様への調査内容】 紛争事例
※「千葉県宅地建物取引業協会 研修会テキスト」 から抜粋したものです。
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処分禁止の仮処分登記の調査をしなかった |
媒介業者が、処分禁止の仮処分の登記の調査をしなかったため、損害賠償を命じられたケース
紛争内容
- 媒介業者Aは、買主業者Bから旅館またはアパートに使用できる土地建物があれば購入したいとして、媒介依頼を受けていた。
- 媒介業者Aは、売主C会社が所有し、売りに出した物件があることを知り、買主業者Bに紹介したところBが気に入り、Aの媒介によりB・C間の売買契約が締結され、契約当日BからCに対し手付金が交付された。
- しかし、当該物件には売主Cの親会社の倒産に伴いすでに「売買、譲渡、質権・抵当権・賃借権の設定その他の一切の処分を禁止する仮処分」がなされ、その旨の登記がなされていた。
- この事実は、売主Cの代表取締役(倒産した親会社の代表取締役と同一人)らは知っていたが、買主業者Bはもちろん、媒介業者Aも知らずに契約の締結がなされたものである。
- 当該契約には次のような経緯があった。すなわち、契約締結の前日に買主業者Bが登記簿の調査について発議し、媒介業者Aが司法書士に電話で登記簿の閲覧調査を依頼した。その結果、AおよびBは互いに、司法書士からの異常がなかった旨の報告を、相手あ確認しているものと思いこんでいた。
- 買主業者Bは、契約後、銀行にこの物件を担保とする融資を申し込んだ時点で処分禁止の仮処分の事実を初めて知った。三者間において交渉の結果、売買契約は合意解除された。
- 買主業者Bは、売主Cに手付金の返還を求めたが、Cは全く支払い能力がないため、Bは媒介業者Aに対し、媒介契約の調査義務違反を理由にして、手付金相当額の損害賠償請求をした。
【買主(借地人)Bの言い分】
媒介業者は、売買の目的物件について、つぶさに瑕疵があるかないかを確認するとともに、その登記簿を閲覧して不安な点がないかどうかを確認する義務がある。媒介業者Aは、この義務を怠り依頼者に損害を被らせた。
Aは、過失相殺を主張するが、媒介業者が登記簿を閲覧調査する義務は、受任者が負うべき善管注意義務の範囲に属し、法律が特に受任者に課した義務であるから、委任者に対し過失相殺の主張をなし得るものではない。
【媒介業者Aの言い分】
売買契約は買主業者B・売主C問で合意解除され、Cが手付金返還を約したのであるから、当方に支払義務はない。
また、買主も業者であるから、購入物件の登記簿は自らも調査すべきである。
【本事案の問題点】
- 購入依頼を受けた媒介業者Aは、取引物件について不動産登記簿の閲覧ないし謄本の取り寄せもしないで、契約を締結させた。
- 買主業者Bも業者でありながら、登記簿の調査について怠った。
【本事案の結末】
媒介業者Aには、登記簿を閲覧の上、その結果を依頼者の買主業者Bに告知する媒介業務上の義務が課せられており、しかも閲覧は容易にできる状況にあった。
ところが、Aは自らこれを行わず、契約の前日になって司法書土に電話で登記簿の閲を依頼した。しかし、その結果を確認しないまま契約の場に臨み、当該不動産に処分禁止の仮処分登記のあることを知らずに本件契約を締結させ、Bに手付金を支払うに至らしめた点に業者Aの過失が認められ、債務不履行が成立する。
また、Bは、専門家の立場から、登記簿の調査を容易になし得たにもかかわらず、こを行わず、また、Aに登記簿の調査を指示しながら、その結果を開くことなく契約を結したのであるから、軽率のそしりは免れず過失が認められる。
これを総合すると、本事案は、Aの過失とBの過失が競合してBに損害が発生したのであるから、請求額の半額を賠償額とするのが、公平・妥当であるとされた。
本事案に学ぶ
- 契約締結の直近の謄本を入手し、権利関係の調査をする
業者は、取引物件の登記簿を調査することは当然であるから、売買契約締結の直近の登記簿謄本を入手する等して、権利関係の調査をすることが必要不可欠である。
また、司法書士に登記簿閲覧を頼んでいる場合、そのままにするのでなく、その結果を確認して契約に臨むのは当然である。
- 買主も業者であり、業者任せにせず督促・確認を行う
本事案では、買主は業者であるが、不動産の法律関係の調査方法等に精通していなかったため起きた紛争であり、また、その調査を人任せにしたのが問題であった。
したがって、買主も業者である以上、媒介業者任せにするのでなく、業者に督促するなり確認しなければならない。
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