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ホーム >> 【個人のお客様への調査内容】 紛争事例
※「千葉県宅地建物取引業協会 研修会テキスト」 から抜粋したものです。
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路地状敷地の接道部分の確認を怠った |
路地状部分が他人の土地を含んでおり、接道義務を満たさないため、売主業者および媒介業者が損害賠償責任を問われたケース
紛争内容
- 買主Aは、自宅を建てるため、業者Bの社有物件を業者Cの媒介で購入した。売買対象土地は、路地状敷地(概略図(イ)部分)であった。
- 媒介業者Cは、売主業者Bから前所有者が取得済の建築確認通知書を入手、同書に添付された図面から売買対象土地のみで確認がおりていると即断し、他人所有の概略図(ロ)部分が含まれていることを確認しないまま、建築可能な土地であると買主Aに誤った説明を行った。
また、Cは現地における概略図(イ)と(ロ)の境界点の調査確認も怠った。
- 買主Aは媒介業者Cの説明を信じて売買契約を締結し引渡しを受けた。
その後、Aは概略図(ロ)の接道部分を含めて新たに建築確認を取得し、現在、当該地に自宅を新築し入居している。
- 入居後、建築確認通知書上は、公道に接する路地状部分の幅は他人所有の土地を含んでのことであり、買主A所有の接道部分だけでは確認がおりず、この状況では、建築基準法上、将来、売買対象土地に適法な建物を建築できないことがわかった。
- そこで、買主Aは、将来の建替計画が不可能になるとして、売主業者B、媒介業者Cに損害賠償を求ゆて紛争に発展したものである。
【買主Aの言い分】
媒介業者Cの説明では、売買対象土地の公道に接する幅は、概略図の(イ)と(ロ)を含んだ範囲とのことであった。
その後、売買対象土地には斜線(ロ)の部分が含まれておらず、売買対象土地の公道に接する幅のみでは建物を適法に建築することは著しく困難であるのに、何らその点に関して告知しなかったのであるから売主業者BおよびCは、連帯して損害賠償をすべき義務がある。
B、Cが主張するように建築確認を受けたうえ建物を新築し入居しているが、仮に(ロ)の部分が、将来通路でなくなった場合には、その時点から接道義務を満たさない既存不適格建築物となるのであり、その後の建て替えも不可能となる。また、B、Cが主張している通行地役権は確保されていない。
【媒介業者Cの言い分】
買主Aに対し、売買対象土地単独では適法に建物を建築することが可能であると説明したことは認める。しかし、売主業者Bからそのように説明を受けているし、交付された図にもそのように記載されていた。
Bが売買対象土地に(ロ)部分が含まれていないことを隠していたのであり、当社に過失はない。現実にAは、土地の所有者として(ロ)の部分も含めて建築確認を取得し建物の新築をしており、(ロ)の部分の通行地役権も有しているので、Aぎ主張するような損害はない。
また、(イ)と(ロ)とは、客観的に一団の土地を構成しているので、将来建て替えをする場合でも売買対象土地に適法に建物を建築することは可能である。
【売主業者Bの言い分】
売買契約前に媒介業者Cに公図(写)や地積測量図および建築確認通知書等を渡していたので、当社としては、Cが買主Aに対して(ロ)の部分は売買対象土地に含まれていないこと等を説明していると思っていた。
また、通行地役権も有していると思っていた。
【本事案の問題点】
- 売主業者Bは媒介業者Cが買主Aに対して(ロ)の部分は売買対象土地に含まれていないと説明していると思いこんだ。
したがって、Bは、Cに地積測量図等を渡したのみであらためて説明は行わず、しかも重要事項説明書には何ら記載しなかった。
- 媒介業者Cは、売主業者Bから地積測量図等を受け取っていたにもかかわらずその内容の確認を怠り、売買対象土地のみで建築可能な土地と誤った説明を行った。
【本事案の結末】
- 売主業者Bは、地積測量図等を媒介業者Cに交付したのみで、(ロ)の部分について何ら説明をしなかった。
また、買主Aに交付した重要事項説明書の「敷地等と道路との関係」欄に接道状況について何ら記載もなく、図面の添付もなかった。また、説明もなかった。
したがって、Bは、買主の認識に誤りがないかどうか自ら確認すべき注意義務を怠った過失行為(不法行為)があるものとして、損害賠償を命じられた。
- 媒介業者Cは、地積測量図等の確認を行わず、売買対象土地のみを敷地として建築確認申請を行った場合は建物を適法に建築することができないにもかかわらず、建築可能な土地であると買主Aに誤った説明を行ったのであるから、真実をAに説明すべき媒介業者としての注意義務を怠った過失行為(不法行為)にあたるとして、損害賠償を命じられた。
- 本事案において、不動産鑑定士により当該地イ部分のみ(売買対象土地)の売買契約当時の価額は1億3千万円(更地価格の約50%相当分)と評価された。したがって、売主業者B、媒介業者Cは、取引価格2億4千万円との差額1億1千万円の約80%(※)にあたる約9千万円を連帯して、買主Aに損害賠償とし支払うべき旨の判決がおりた。なお、B、Cが主張した通行地役権については、同判決は認めなかった。
※ 当該地は適法に建築確認がなされており、(ロ)の部分の使用状況から(ロ)の部分が単独で譲渡される可能性が低い。また、買主が(ロ)の部分の購入ないし使用権を相当額で取得できる可能性が全くないわけではない点を斟酌した。
本事案に学ぶ
- 路地状敷地は、接道の幅や条例等に特に注意して、地積測量図等の資料を確認し、現地をよく調査する
媒介業者Cは売主業者Bから地積測量図や公図(写)を受け取っていたにもかかわらず、資料等の確認を怠ったことによりこのような紛争にまで発展した。
したがって、業者は、本事案のようなケースでは、次の点に留意し、地積測量図や公図等の資料を見落とさないようにする。
■路地状敷地の調査上のポイント
●路地状敷地は、基準法のみならず条例の規制により、路地状部分の長さ、建築物の構造、規模、階数によって、路地上部分の必要な幅員が決まってくるので、細心の注意を払う。
●業者は、現地に行き境界の確認を必ず行い、取引対象地を確認する
・測量図面等があれば、図面上に表示された境界点を現地で実査する。
・境界未確定の場合は、隣地所有者の立ち合いにより、できる限り、境界を確定し、書面で残しておくようにする。
・権利証、境界確認書、地積測量図等により、取引対象地の範囲および権利関係等を確認する。
- 売主業者も重要事項の説明義務がある
売主業者Bは業者であり、道路と敷地との関係を知っていたにもかかわらず、媒介業者Cに資料を渡しただけで事足りたと思っていたが、売主も業者である以上、媒介業者の調査した内容をチェックし、不明な点などは念を押すことが必要である。 また、自ら重要事項の説明義務があるのは当然である。
- 事前に接道義務を満たすための善後策を講じる
本事案では、どのような交渉経過があったかにかかわらず、業者の処理方法いかんによっては、隣地所有者の敷地の使用承諾を得たり、買い取る等の方法により数百万円費用支出で済む可能性もあったと思われる。
ところが、判決は売主業者B、媒介業者Cに対し、連帯してAに約9千万円を支払うよう命じた。
このことは業者として調査確認ミスが大きな損害につながることを示したものであり、このようなことがないよう十分調査および確認し、本事実のように接道等で土地としての資産価値等に問題があるケースでは、隣地所有者との交渉等により、事前に、接道義務を満たすための善後策を講じることが肝要である。
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