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ホーム >> 【個人のお客様への調査内容】 紛争事例
※「千葉県宅地建物取引業協会 研修会テキスト」 から抜粋したものです。
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賃貸人の所有権の確認を怠った |
媒介業者が、賃貸人の所有権の確認を怠ったため、債務不履行にもとづき損害賠償を命じられたケース
紛争内容
- 昭和63年9月下句、ラーメン屋を開業するため店舗を借りたいという客Aが媒介業者Bの事務所を訪れた。
- 賃借人Aは、業者Bの媒介により、当該店舗の所有者でありかつ賃貸権限を有するとする賃貸人Cとの間で本件店舗賃貸借契約を締結した。
- 媒介業者Bは、賃貸人C自身に賃貸権限ある旨の説明を信用し、当該店舗の所有名義の確認を怠った。
また、賃借人AもCの説明を信じ、了承した。
- ところが、賃貸借契約の締結当時すでに当該店舗は第三者に売却されており、所有権移転登記がなされ、また、第三者(所有者)を債務者とする根抵当権が設定されていた。
- その後、根抵当権にもとづく競売により、当該店舗は競落人の所有するところとなったため、賃借人Aは、当該店舗を明け渡さざるを得なくなった。
- 賃借人Aは、媒介業者Bに対し、債務不履行にもとづく損害賠償を求めた。
(注)賃借人Aは、宅建業の営業はしていなかったものの、会社の営業目的には不動産の賃貸、管理ならびに媒介が掲げられていた。
また、Aの代表者は宅地建物取引主任者の資格を有する。
【媒介業者Bの言い分】
業法第35条の重要事項の説明義務を怠ったことは確かであるが、媒介業者には、賃貸に賃貸権限があるか否かまでを調査する義務はない。したがって、媒介契約上の義務違反にはならないと考える。
【本事案の問題点】
賃貸借契約を媒介する際に、媒介業者は、賃貸人に果して所有権その他の賃貸権限があるか否かを調査・告知する義務があるのだろうか。
【本事案の結末】
賃借人Aが賃貸人Cに預託した保証金500万円が、Cから返還されず、Aは保証金相当額の損害を被ったが、Aの代表者が取引主任者の資格を有すること勘案すれば、登記簿の確認をしなかったAにも落ち度があるものと言わざるを得ない。
しかし、権利関係の確認は媒介業者Bにあることは明らかであるとしてAの過失割合を3割とし、その金額相当分を差し引いた結果として350万円の損害賠償をBに命じる判決が言い渡された。
本事案に学ぶ
媒介業者は、登記簿の記載の説明だけでなく賃貸権限があるか否かまでも調査する
本事案では、媒介業者Bが登記簿の確認をしなかったために紛争となったケースであり、借主が賃貸人の説明を了承していたとしても免責されるものではない。
媒介業者は、登記簿に記載された所有者と現実の賃貸人とが異なる場合には、登記簿は契約締結の直前に必ず確認し、登記簿の記載事項を説明するのはもちろん、賃貸人に賃貸権限があるか否かまでも調査する。
(参照)
賃貸借の媒介において、媒介業者は代理人に代理権があるか否か等についても調査・説明の義務があるとされている(東京地裁・判決・昭和 60.9.25)。
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